BLOG ブログ

財産の整理(共有不動産の解消)

財産の整理(共有不動産の解消)

1. はじめに

 前稿でも述べたように、相続の準備を進めていくと財産の整理を行っていくことになると思いますが、財産のうち不動産は直ちに換金が難しい割には財産としての評価額は少なくはないので、早めに着手していかなければなりません。
 しかし不動産が複数人の共有名義になっている場合は、後述するように該当不動産の処分が難しくなります
 今回は共有不動産の整理についてお話ししたいと思います。

2. 共有不動産とは

 文字どおり一つの不動産の所有権を複数の人間が所有している物件を言います。
 共有不動産かどうかは法務局で不動産登記簿謄本を確認することで判明します。具体的には不動産登記簿謄本の甲欄で確認できます。
 なお、登記簿上単独所有になっていても、所有者が故人で相続人の登記がされていない場合は、該当の不動産について遺産分割協議が行われているか確認する必要があります。遺産分割協議が行われていない場合は、該当の不動産は相続人の共有として扱われます。
 なお共有不動産を共有者の一人が利用することは問題ありませんが、処分をする場合は共有者全員の合意が必要になります。これが財産整理を難しくすることになります。

3. 共有不動産のメリット・デメリット

(1) メリット
  共有の居住用不動産を売却した場合には、共有者それぞれに3,000万円の特別控除や課税の繰り延べを受けることが出来ます。
  しかし、居住用不動産のうち建物と土地が別名義であった場合は、土地建物を一度に譲渡しても所有者全員で3,000万円の所得控除を受けることしかできません。
(2) デメリット
  共有者全員の全員の合意がなければ処分が出来ない
    共有者同士の関係が悪いと財産整理が進まない、共有者のうちの一人に相続が発生していると所有関係が把握できなくなる等の事態が生じます。
  ② 自らの共有持分を売却することは理論的には可能だが、実際には処分が難しく処分できたとしても相場より不当に低い価額での処分しかできなくなります。
  ③ 共有者の一人が不動産を利用していた場合であっても、その他の共有者は固定資産税等を負担しなければならなくなり、トラブルの温床となります。

4. 共有不動産を解消する方法

以下の方法により共有持分を解消することが出来ます。なお税務上は不動産の譲渡等として扱われますので、所得税や贈与税の確定申告が必要になります。
(1) 等価交換を行う(※)
  自己所有の不動産が他にある場合は共有者と自己所有の不動産の等価交換により単独所有にする。または共有者が他に不動産を有している場合は自己の共有持分と相手方の不動産を等価交換し単独所有にする。
(2) 持分を金銭で買い取る(※)
  共有者の共有持分を金銭で買い取る、または共有者に自己の持分を売却して単独所有にします。

  (※)(1)(2)ともに税務上は時価での移転が前提となります。時価によらず売買等してしまった場合は、時価相当額での売買があったものとみなされ、売主等に時価相当額を基礎とした税金が課されることになります。
  時価を算定するためには売買等の前に不動産鑑定士に依頼して該当不動産の評価額を把握しておくと良いでしょう。
  特に親族間での売買等は租税回避しやすいこともあり税務署の注意をひきやすいので、客観的な資料を残しておくことが重要です。

(3) 贈与する
  共有者の一人に持分を贈与して単独所有とします。
  ただし原則として、贈与を受けた側に贈与税が課されます。なお状況によっては贈与税の非課税の特例等を利用することで贈与税が発生しないようすることもできます。

5. 最後に

 共有不動産の整理は簡単に進められないことも多く、また整理方法によっては思わぬ課税が生じることもあります。共有不動産を整理するには、税理士や不動産鑑定士等の専門家の意見を聞きつつ慎重にすすめることをお勧めします。