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相続を考える際の順序

相続を考える際の順序

1. はじめに

 相続の準備を始めるに際して、何から手をつければよいかお悩みの方は多いと思います。
今回はどのような順序で相続の準備をすべきかについてお話をしたいと思います。

2. 円満な相続を目指すための順序

以下のような順序で考えると良いでしょう。
(1) 所有財産の確認をする
(2) 財産の整理を行う
(3) 誰に相続させるかを検討する
(4) 納税資金を予想する
(5) 納税資金が準備できるか検討する
(6) 相続税の節税を検討する

 よく相続税の節税を優先で準備されている方を見かけますが、(2)財産の整理と(3)誰に何を相続させるかを優先して考えるべきだと思います。節税を優先した結果、納税資金の準備やご遺族への財産の分割が困難になることがあり、無用なトラブルを巻き起こすことになりかねないからです。

3. 所有財産の確認

 ご自身が所有する財産(資産負債)を一度すべて洗い出してみましょう。
 資産とは、現金、預金、不動産(ご自宅、別荘、賃貸マンション等)、動産(貴金属、骨董品、車両等)、上場有価証券、未公開株式(投資用だけでなく自社株も含む)、事業用資産(個人事業主の場合)の現在所有している財産だけでなく、将来発生する財産(保険契約、退職金等)も相続財産に含まれます。
 負債とは、主に借入金、リース債務等の未払金を指します。
 これらの財産を洗い出し、その時価を把握しておく必要があります。
 なお、未公開株式や不動産については一定の計算方法により算定します。

4. 財産の整理

 3で把握した財産のうち、ご親族に残したくないもの、実質的には無価値なもの(回収の見込めない貸付金等)があれば処分または債権放棄等をしましょう。
またご親族に引き継がせることになる負債は出来るだけ整理し、ご親族にも相続前に負債の存在はすべて把握していただいた方が良いと思われます。相続後にご親族も知らなかった借金の存在が判明するというトラブルは珍しくありません。相続する側も負債の存在を把握していれば、こういったトラブルを未然に防ぐことができます。

5. 財産の分割(相続人への財産の分配)

 財産の整理がひと段落したら誰に何を相続させるかを検討し、遺言書(できれば公正証書遺言)を作成することをお勧めします。なるべく相続後に親族間でトラブルが発生することのないような分配を検討されると良いでしょう。
 遺言の作成は、認知症等のリスクがあることを考えると早めの着手をお勧めします。なお遺言書は何度でも書き換えは可能なので、最初から完璧なものを目指さなくても良いと思います。まず一度作成して精度を上げていく方法が現実的と考えます。
 相続発生後に遺言がない場合は、相続人間で遺産分割協議となります。なお遺産分割協議に期限はありませんが、協議がまとまらないからと言って相続税の納付期限(相続発生から10か月以内)が延期されることは一切ありませんのでご留意ください。

6. 納税資金を予想する

 財産の整理と分割が決まったら、税理士に依頼して相続税のシミュレーションをします。ここで大まかな納税額を把握しておきましょう。

7. 納税資金の準備をする

 6でシミュレーションした納税額が判明したら、現在の財産(特に現預金)で納税額を賄えるのか検討しておく必要があります。不動産や未公開株式などの換金が難しい財産が多い場合は納税額を準備できない可能性があるので、早めに処分するまたは一定の条件を満たす必要がありますが納税猶予制度を検討する必要があります。

8. 相続税の節税を検討する

 納税資金を確保できる目処がたったら初めて相続税の節税を検討すべきと考えます。
 具体的には、推定相続人へ財産の生前贈与を行い財産の圧縮を図る方法や、小規模宅地の特例の利用等により財産の評価額を引き下げる方法などがあります。
 なお、財産の贈与には贈与税が課税されるため、無計画に生前贈与すると相続税よりも納税負担が重くなることがあります。贈与の際は税理士などの専門家の意見を参考に慎重に行う必要があります。

9. 終わりに

 相続において最も大事なことは残された親族への円満な相続を目指すことだと考えます。そのためには財産の全体像を把握し、親族間トラブルを発生させないよう専門家の意見を参考に遺言の作成など早めの対策をお勧めします。