1. はじめに
2. 相続税申告における貸付金の問題点
(1) 貸付金が高額である場合、相続税負担が重くなる
(2) 回収見込みがなくても貸付金額で財産評価される。
(3) 不動産による物納のように相続税の納税資金に財産を充当できない。
(4) 相続税の延納制度を利用する際の担保として利用できない。
3. 貸付金の整理方法
(1) 会社が金融機関から借り入れをおこして、そのお金で被相続人の借り入れを精算する
会社の与信枠がある場合に限ります。
この場合、被相続人側も相続税の納税資金も準備できるのでおトクです。
(イメージ図)
(2) 被相続人の借入金をDES(デット・エクイティ・スワップ)の利用により資本金に振り替える
DESとは債務(貸付側からは債権)と株式を交換する取引を言います。
この場合、債務は株式の時価で交換されますので、債務額と時価との差額は債務免除益が生じます。
相続税法上は、被相続人の貸付金が未公開株式に振り替わり時価評価されるので相続財産の圧縮につながります。
また法人課税においても、繰越欠損金が債務免除益よりも多い場合に債務免除益を繰越欠損金と通算することができ、法人税課税を抑えることが出来ます。
(イメージ図)振替時の株価20とする
(3) 被相続人の会社貸付金を一旦返済して、同額を資本金として出資する(疑似DES)
会社に対する貸付金を一旦返済し、同額を会社に出資します。
実質的に貸付金が資本金に振り替わるので上記(2)のDESと似た結果となります。
相続課税の観点からは財産評価において、被相続人の貸付金としての評価から未公開株式としての評価に切り替わります。未公開株式は時価評価なので貸付金よりも低い時価の場合財産評価額を抑えることが出来ます。
なお、この場合は上記(2)と違って法人課税において債務免除益は発生しません。
また法人課税においては増資としての扱いになりますので、法人税における中小法人の特例の不適用、均等割や外形標準課税の増額につながる点に留意が必要です。
(イメージ図)
(4) 貸付金を債権放棄する
会社貸付金を債権放棄することで、相続課税の観点からは財産から切り離すことが出来ます。
また法人課税においては、会社貸付金の債権放棄は会社側から見ると債務免除益となりますので、(債権放棄直前の会社の繰越欠損金額)>(債権放棄額)の場合には、法人税等が発生することはありません。
(イメージ図)