1. はじめに
また資金繰りが忙しくなるのは業績が良くない会社というイメージがありますが、経営が順調であっても売上増加や季節要因で資金繰りは忙しくなることは珍しくありません。また季節的な要因などで資金繰りは忙しくなることがあります。
業種や規模の大小を問わず、すべての経営者にとって資金繰りは意識すべき数値と言えましょう。
2. 試算表等で会社の現状をなるべく早く理解する
現状を手っ取り早く把握するには直近の試算表等で(1)、(2)の確認をするのが良いでしょう。
(1) 当座資産と流動負債を比較する
試算表では以下の科目の残高に着目してください。
・当座資産 現預金、受取手形、売掛金、有価証券などの換金性の高い財産
・流動債務 買掛金、未払金、未払費用、預り金、短期借入金などの支払い期限が近い債務
(当座資産)÷(流動債務)>1であれば資金がまだ回っているという状況です。
この数値が1より大きければ大きいほど資金繰りに余裕があると考えられます。
逆に言えば(当座資産)÷(流動債務)<1であれば懸念すべき状況にあると考えられます。
(2) 現預金の残高が平均月商の3か月分相当額あるか
試算表の損益計算書の売上高を見ていただき、売上高を期首からの月数で割り平均値(平均月商)を出します。
手許現預金と平均月商の3か月分の数値を比較して、手許現預金がこれを上回っているか確認しましょう。
35百万円 > 30百万円(=120百万円÷12か月×3か月)
例のように上回っていれば、たとえば売掛金や受取手形の回収に遅れが出た場合にも、人件費や経費の未払いを起こすことなく、資金繰りに余裕があると考えられるでしょう。
逆に下回れば資金繰りに不安を残す状況と言えるでしょう。
さらに手許現預金が平均月商の1月分に近いと、かなり危険な状況と考えられます。
上述の(1)、(2)での指標が良くない場合は、4.以降で述べる対策を早急に打つ必要があると思います。
3. 資金繰り表を作成して、今後の資金繰りを予測する
これにより資金が不足する時期が事前に予測できれば、借り入れをするなど資金調達の対策を講じて資金ショートを防ぐことが出来ます。
試算表との違いですが、試算表は現状把握のために、資金繰り表は今後の予想と対策のために利用します。
また資金繰り表の内容が頭に入っている経営者は、金融機関からの評価が高くなると思います。
なお、資金繰り表の作成は説明が長くなるので別記事で行いたいと思います。
4. 資金繰りを良くするため出来ること
(1) 売掛金等の回収を早くする
自社の回収期間を確認し、長期化しているものは販売先と交渉し回収期限を早めましょう。受取手形があれば、手形割引にして現金化する、なるべく手形でなく現金回収を目指す。
回収期間が長い取引先は取引自体を思い切って見直す。
(2) 不稼働在庫または遊休資産を処分して換金化する
在庫の内容を確認して、長期間、滞留している在庫があれば原価割れになっても現金化しましょう。
また固定資産の管理状況を確認して、あまり稼働していない機械装置、車両を確認し、または継続して支払っている保険積立金などがあれば、処分又は解約し現金化しましょう。
(3) 定期預金等の拘束性の高い預金を解約して普通預金等へ
お金があってもすぐに使えなければ意味がないので解約しましょう。また預金を担保になっている場合は、不動産や機械装置等の別な資産に変えてもらうよう交渉する。
(4) 支払の条件を見直す
仕入先等と交渉し、支払期限を延ばしてもらえないか交渉する。
あまりに支払時期の短いものは取引自体を見直す。
ただし金融機関との支払条件の見直しはその後の借入にも影響が出かねないので慎重に対応する。
(5) 借入金の返済を短期から長期へ振り替える
短期借入金が多ければ、なるべく長期借入金に振り替える。少しでも返済期限の短いものは減らして、手許預金等の安定を図る。
(6) 資金調達する
金融機関等からの借り入れをする。できれば複数の金融機関から調達するのが望ましいです。
社長または親族の自己資産から借り入れまたは増資を行う。
その他、補助金や助成金の申請を行う。最近では自社の経営理念への共感をもとに資金を募るまたは自社商品をアピールして販売するクラウドファンディングも一種の資金調達と考えられます。
(7) リスケを依頼する
上述の(1)-(6)のなどの手段を講じてもなお厳しい場合は、金融機関にリスケを依頼して資金繰りにゆとりを持たせましょう。ただしこの方法は新規融資が厳しくなったりするので正直おすすめしません。